専門外来

SPECIAL TREATMENT

痙縮・神経ブロック

痙縮やジストニアに対する治療法として、神経ブロック治療をおこなっています。

痙縮やジストニアに対する治療法には、神経ブロック治療(フェノールブロック、エタノールブロック、A型ボツリヌス毒素)や、 内服治療やリハビリテーション訓練(関節可動域訓練、温熱療法、筋再教育訓練など)があります。内服治療は飲むだけで済みますが、 効き目が少ない上良い筋肉にも作用してしまいます。一方神経ブロックは注射したところだけに効かせることができますが、 注射の痛みや筋肉の脱力のために歩行や動作が以前と変わります。

  1. フェノールブロック
    筋肉のこわばり(痙縮と呼びます)や異常な運動や姿勢(不随意運動またはジストニアと呼びます)に対して、その筋肉に入る運動神経に直接フェノール注射液を注射して治療を行います(通常5%フェノールを使用します)。注射する筋肉に入る運動神経を確認するために、電気刺激を使用します。通常週1回の治療を数回反復して行います。
  2. エタノールブロック
    筋肉のこわばり(痙縮と呼びます)や異常な運動や姿勢(ジストニアと呼びます)に対して、その筋肉に直接エタノール(アルコール)注射液を注射して治療を行います(0.5%リドカイン:純エタノールを10:1で使用します)。従って局所麻酔薬に対する重大な副作用の既往がある方やアルコール不耐症・過敏症、アルコール中毒の方には行えません。注射する筋肉を確認するために、筋電図を使用します。通常週2回の治療を数回~10回程度反復して行います。
  3. A型ボツリヌス毒素
    A型ボツリヌス毒素は現在日本において「眼瞼痙攣」「片側顔面痙攣」「痙性斜頸」または「小児脳性麻痺における下肢痙縮に伴う尖足」で使用可能です。筋肉のこわばり(痙縮と呼びます)や異常な運動や姿勢(ジストニアと呼びます)に対して、その筋肉にA型ボツリヌス毒素(ボトックス)注射液を注射して治療を行います。A型ボツリヌス毒素を注射した場所に作用して、神経の働きを抑え、筋肉の痙攣や緊張を抑えます。治療後2、3日~2週間で効果が現れ、通常3~4ヶ月持続します。その後、時間が経つにつれて徐々に効果が消失し神経の働きが回復してくるため、注射前の症状が再び現れてきます。この場合はA型ボツリヌス毒素を再投与することにより、同様の効果が現れます。
    副作用で多く報告されているものは、以下の通りです。
    1. 「眼瞼痙攣」で眼瞼下垂(2.19%)、兎眼・閉瞼不全(2.14%)、流涙(1.04%)
    2. 「片側顔面痙攣」で兎眼・閉瞼不全(2.19%)、局所性筋力低下・顔面麻痺(1.82%)、流涙(0.94%)
    3. 「痙性斜頸」で嚥下障害(2.99%)、局所性筋力低下(1.16%)、発疹(0.35%)
    4. 「小児脳性麻痺における下肢痙縮に伴う尖足」で転倒(9%)、下肢の疼痛(2%)、下肢の脱力(2%)、全身の脱力(2%)
      全身性の筋肉の脱力などの病気(例えば重症筋無力症、ランバート・イートン症候群、筋萎縮性側索硬化症など)がある場合は、これらの病気を悪くすることがありますので、使用できません。従ってA型ボツリヌス毒素を初めて使用する前に、これらの病気でないことを確認するために、筋電図検査を実施する場合があります。さらに妊娠中および授乳中も使用できません。また小児(15歳未満)に対する安全性は確立していません。
担当医師 松尾 雄一郎
大森 紅己子
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